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【鉄球作り(上)】

近頃の子供は泥んこ遊びなどしないだろうが、私なんぞはよくやったもんである。
小学校6年生になってもやっていた記憶が有るので、少々やり過ぎた方かも知れない。

土や泥をこねくり回すだけではなく、長い時間と手間を掛けて「作品」を仕上げていく。
私達はそれを「鉄球作り」と呼んでいた。

まず、材料を調達に行く。
非常に危険で命懸けの作業だ。
車のよく通る道路沿いに吹き寄せられた細かい粒子の砂が最適なのである。
必然、手前の砂では何度も作成済みなので、より良い鉄球を作る為には前人未到の「向こう側」の砂を手に入れなければならない。
そこは校区外であるから「野人」に見付かれば戦闘になる危険も有る。

いくら30年以上前だと言っても交通事故は有った訳で、覚悟が要る。
幸いにして「えい、やっ!」と道路を無事渡れたとしても、砂をおもちゃのバケツに掻き集めている後から車が乗って来ないとも限らない。
だから、車が来る方向を向いて、目に砂埃が入るのを我慢しながら作業をする事になる。
私の乱視は、たぶんその作業のやり過ぎではないかと思う。

次に作業場を確保する。
とても時間が掛かるので、誰にも邪魔されず、じっくり腰を据えて続けられる場所が必要なのだ。
公園の植え込みの陰辺りがいい。

そこに収集した砂をバケツから出して小さな山を作る。
そうしておいて水を汲みに行く。
バケツを空にしたのはその為である。
どのくらいの水が適量かは個人の丸秘事項で、誰も本当の事を言わないから自分で何度か試作するしかない。
私の経験では少なければ少ない程良いのだが、あまり少ないとボソボソして形を成さない。
by himesika | 2009-06-19 22:08 | 駄文 | Comments(0)