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【食卓】

私の母親は、らっきょが大好きだ。
コーヒーのビンに入れた好物をニコニコしながら持って食卓に着くと、即座に家族全員が避難する。
一方、亡くなった親父は神戸に住んでいるくせに、よく納豆を食っていた。
ねぎと卵を入れてクネクネこね始めると、私達兄弟はまたも逃げねばならない。
ネバネバとキンキンした匂いとがからまって、とてもの事に食事どころではないのはお分かり頂けるだろう。

そのうち近所から立ち退き要求が出るぞと思っていたら、市営住宅だったので神戸市から「出て行け」と言われてしまった。
当時、隣の明石市ではらっきょと納豆におおらかであった為、何とか引っ越して来る事が出来た。

給料を貰うようになって、らっきょ・納豆と同居する義務がなくなると、一人姫路へ流れて自立した。

不幸という物はどこに潜んでいるか判らない。
神の悪戯か、前世の因縁か、何と、二人の子供が二人共、納豆を食うのである。
将来を心配して家内に止めさせようと思った或る日、片肘付いてらっきょをむさぼる家内を見た。
by himesika | 2007-11-10 23:20 | 駄文 | Comments(0)